心 の 軌 道 修 正 を
                                 人権擁護委員  平和 宏昭
 2007年の世相を表す漢字一字に「偽」が選ばれ、京都・清水寺の森清範貫主は、「こういう字が選ばれるのは、まことに恥ずかしく悲憤に堪えない。分を知り神仏が見ているのだと自分の心を律してほしい」と話されました。書きたくない心境を語られたのだと思います。
 私たちが住んでいる世界は、「生きている世界」と「生かされている世界」の2つが重なりあっていると思います。「生きている世界」とは、私たちが理想を抱き、目標を立て前進していく世界、努力して生きる世界です。この世界では欲望が生まれ、競争を生み出します。
「生かされている世界」とは、多くの人や物の恩恵をいただき生きていることに気づいて生きる世界です。この世界では命の尊さや思いやりの心が培われます。
 人命に関わる犯罪、家族の崩壊、ニート、キレる子ども・・・こうした住みにくい社会になっているのは、お互いが共存し生きている「共生き(ともいき)」の世界に目を向けなかったためではないでしょうか。
 今の私たちは、「生きている世界」「生かされている世界」とのバランスを崩しています。基本から考えなければならない問題です。
 正月の「正という字を漢和辞典で引きますと<悪事、あやまちを止めて改めさせる>と出ています。つまり、自分が「人間として原点」に立ち返る月が正月です。
 私たちは、他人に迷惑をかけていることも、自分がいつの間にかずる賢くなっていることも、気づかずに過ごしています。新たな気持ちで迎えた正月は、自分や家族、世の中の在り方を考え、姿勢を正し、心の軌道修正をする月です。
 今年は、昨年のNHK紅白歌合戦のテーマ「力・絆」の漢字が選ばれるような良い年であることを願っています。