殺してはあかん
                                    人権擁護委員  酒井 勝彦
人が人を殺してはいけないというが、事件は後を絶たない。なぜ人が人を殺してはいけないのかと真剣に考えたことかあるだろうか。◆他の生き物は同じ種同士では殺し合いをすることはない。食物として殺して喰うことはあるが、感情の高まりや咎められたということで殺すことはない。◆殺せば必ず喰うのである。私たち人間は人を喰うために殺すのではない。天明の飢饉の時、あまりの空腹のために屍肉を喰ったと言うことはあるが、喰うために殺したという文献は見あたらない。◆仲間をウザイと誹り、挙げ句には「何で人を殺したらあかんのか?」と聞く若者がいるという。そのとき、私たち大人は、「何で人を殺したらあかんのか」と、きっちり説明できるのか。◆有り余る喰い残しをゴミにし、あふれんばかりの料理番組にはもうウンザリする。「いただきます」「ごちそうさま」も言わずに、いや、その意味さえ知らずに私たちは「いのち」を喰い続けていく。◆ある民族は、食材となった生き物に長々と謝りの言葉を述べなければ箸を持たないという。◆私たちは、殺されるためにこの世に生まれて来たのではない。「いのち」を輝かせるためにこの世に来たのだ。満腹のライオンの前を野ウサギが通っても、ライオンは野ウサギを殺さない。でも人間なら野ウサギをどうするか?。面白半分に命を奪ってはならない。◆戦争は最たる人間の狂気だ。どんな理由をつけても…。ゴーマニズムのトリックにはまってはならないのだ。
   
                                                同教新聞 随想より