私には三つ年上の兄がいます。私が小学四年生になる頃までは、たよりになる兄でした。
しかし、兄は中学に入った頃から周りの人とは違う行動を取り始める事が多くなりました。部活は一ヶ月とたたない間に行かなくなり、ついにはやめてしまいました。 それだけならスポーツが苦手な兄なので理解はできたのですが、授業を受けることも少なくなり、職員室前や廊下にいることもよくあったそうです。それに時々、暴れ出し周りの人に迷惑をかけることも出てきました。 ある時、児童相談所の方に教わり、精神科医がおられる小児科で診察してもらうことになりました。診察してもらった結果、兄は「アスペルガー症候群」という障害を持っていることが分かりました
「アスペルガー症候群」とは、なんでも自分の計画通りに物事が進まないと混乱し、暴れたり、叫んだりする障害です。毎日の生活と少しでも違うことが起きると、ものすごくストレスを感じてしまうそうです。また話しても理解できないことがあり、絵で説明すると分かりやすいということもあります。その他にも人と話すのが苦手だったりします。
診断が出た後、私は母にそのことを知らされました。それを聞いた私は、一瞬頭がまっ白になりました。その後「なんで?今まで普通に生活してきたのに・・・」と思いました。 私は、その時両親にこう言いました。 「そりゃ、少し変わっているけど、だからってなんでそんな意味の分からない障害なの。」両親も私と同じ気持ちだったのでしょう。うつむくばかりで何も答えてくれませんでした。
一歩家の外に出ると、兄のことを「キモイねん」「変な奴」とか言い、ジロジロ見たりする人もいました。私が中学校に入った頃も周りの人が「あいつの兄貴ってな、変な奴なんやで」などと言っているのを聞いたり、兄を見た人は「お兄さんってキモイよね」などと直接言う人もいました。私は「兄は障害を持っているの」と言ってやろうかと何度も思いました。でも、言えなかったのは、私がそう言うと兄はきっと傷つくと思ったからです。
なぜなら兄も苦しんでいました。自分はどうしてみんなと同じ様にできないのだろうと、家族に何度もそう叫んでいました。
家族もみんな苦しんでいました。兄が何か問題を起こした時には、決まって家族で話し会いをしました。そうすると少し辛さが減りました。みんなも悩んでいたんだな、私だけじゃなかったんだな・・。家族がいたからこそ、私も我慢できたのだと思います。
でも、最近思うようになりました。兄がいけないわけではないと。障害が悪いわけではないと。兄は一生懸命やっています。みんなと同じように生活しょうと努力しています。それでも兄が周りから受け入れられにくいのは、周りの人たちのどこかに関わりたくない気持ちがあるのではないでしょうか。私はそんな気持ちがします。
なぜなら、今の兄になれたのは、兄を理解してくれる人に出会えたからなのです。まず、中学三年の時は介助の先生につきそってもらうことで学校に行きやすくなりました。三年の時の担任の先生に「高校に進みたかったら今のままではいけない。僕についてこい。」と言われて学校に通うようになりました。修学旅行に行かないと言い出した兄を校長先生は両親と担任の先生と一緒になって説得してくれました。結果兄は修学旅行にいけました。その後から学校に行くのが楽しみになりました。高校に入ってからもたくさんの理解してくれる人と出会えました。担任の先生や学年の先生は兄が問題を起こした時、兄が落ちつくまで話し合ってくださいます。こんな風に少しでも理解してくれる人が増えたら兄のような障害を持つ人たちも暮しやすい社会になると思います。
それから、私の家では「障害」ではなく「性格」として考えることにしています。 周りの人にも「性格」として考えてもらいたいです。そうすれば、理解しやすくなるのではないかと私は思います。
これから兄はいろいろなことに挑戦し、できることを増やしていくと決めています。私は発達障害というものについて、深く学びたいと考えています。
そして兄と私たち家族は、お互いに支え合いながら「発達障害」というものを一人でも多くの人に理解してもらえるよう努力していきたいと思います。
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